むかし話の「鶴の恩返し」はご存知でしょうか? 罠にかかった鶴が、助けてくれた男性に恩返しのため、はたを織るというお話です。
地域によって詳細が変わってきますが、おもに鶴を助けるのは男性で、鶴は女性として登場しています。この話をベースに作られた木下順二の戯曲「夕鶴」も有名ですね。
さて、このむかし話、小さいころは特に感じることは少なかったのですが、アラフォーになってから読んでみるとダメ恋愛の典型だとわかります。鶴は不幸にしかなれない。
昔の人も同じようなことを考えていたのではないでしょうか。現代まで伝わっているということは、なにか教訓が含まれているはずです。
私たち現代人は、先人が遺した教訓を学び、ダメ恋愛から脱していきましょう。
鶴は恩返しに行かない方が幸せになった
「鶴の恩返し」に出てくる鶴の最大の間違いは、恩返しをしようとした点です。恩返しをしなかったらお話は続きませんが、自分の幸せを考えるならすべきではありませんでした。
感謝の気持ちを伝えたいのはわかります。ですが、その方法ははたを織るというものではなくてもよかったはずです。人間の女性に姿を変えられるなら、一言「ありがとう」と言葉にして伝えるだけでも、助けてくれた男性は喜んだでしょう。
これで済ませ、その後、それぞれの人生を歩めば、鶴は幸せでした。姿を人間に変えられるという特異体質も知られることもなく、羽根を抜いてボロボロの身体になってまでも働くこともありませんでした。
鶴の自己評価の低さが不幸の素
では、なぜ鶴はどんどんと自らを不幸に導く道を選んでしまったのでしょうか?
それは、鶴の自己評価が低いからです。
「自分のような者が命の恩人に言葉だけの感謝では許されない」と考えているからこそ、過剰なお礼をしてしまったのです。しかも、自傷行為ともいえる羽根抜きをして、はたを織っていますから重症です。
自らを傷つけ、痛みを感じることで原罪を確認する人は現代でも存在します。過労死をするまで働いてしまう人の中には、このタイプの人が多いと聞きます。
このタイプの人は、周囲より自分が苦しんでいないと生きていることを許されないと考えています。おそらく、鶴もそうなのでしょう。
ダメ恋愛をするアラフォー女子が、相談と称して周囲に自分がいかに辛いかをアピールするのも、これに近いかも知れません。辛いと感じないと、恋愛していいという許可を自分に下せないのです。
悲しいですね。
この鶴はダメ女子の典型
「はたを織る部屋を覗かないでください」と、男性にお願いをしたのも間違いです。禁止のお願いは破られることがしばしばです。
この場合だと「夜は先に寝ていてください」がいいでしょう。それか「寝室で待っていてください」です。行動を具体的に指示することで、逆に男性の行動を制限します。これをしていたら、鶴ははた織り部屋を覗かれることがありませんでした。
つまり、指示が下手。
さらに最悪なのが、部屋を覗かれて、正体がバレたときの対応です。「もう、ここにはいられない」と言ってしまったのは、鳥類である自分が人間に受け入れられないと思い込んでいるからでしょう。もし鶴の自己評価が高く、ハツラツと生きているのであれば、あのとき「これも私なんです!」と胸を張って言えたはず。
しかし、言えなかったがために、このときには、すでに鶴を頼りにしていた男性も困らせることになります。
鶴を反面教師にいい恋愛をしましょう!
「鶴の恩返し」はむかし話ですが、このような女性は現代でもいるのではないでしょうか? 鶴を反面教師にし、自分自身を許せるようにならないと、鶴と同じく不幸にしかなりません。
自己評価を上げるのは一朝一夕ではいかないでしょう。でも、日々、自分を労わることで変化が生まれますよ。素敵な恋愛をするためにも、自分を好きでいてください。「鶴の恩返し」は、そういうメッセージを伝えているのかも知れません。
広島県海田町出身。恋愛記事からビジネス文書まで幅広く手掛けるライター。古典芸能に携わっていたことから、日本文化について少し詳しい。 |